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☆第9回氷川短歌賞を終えて 受賞作品☆

11月3日に開催されました「第9回氷川短歌賞」受賞作品を発表します。

大賞と選者賞の作品には、選者の先生方からコメントをいただきました!
最後には先生方が皆さんと同じテーマ詠で詠まれた短歌をご紹介します。

  

☆大賞☆

またね、ってじゃあねとちがう両腕を広げて君は夜に走った       黒川かおる

【枡野先生からのコメント】

《またね》と《じゃあね》では前者のほうが再会を予感させる挨拶ではありますが、私はこの《またね》、永遠の別れを意識しているからこその、あえての《またね》かもしれないと感じました。いつもとはちがう雰囲気の挨拶を残して、両腕を(翼のように)広げて颯爽と去っていった姿。「鳥」を連想する言葉をつかわずに描かれています。お題を知らなくても鳥を連想できる歌だろうかと迷いました。それを含めて一番気になる歌でした。

【東先生からのコメント】

「またね」と「じゃあね」の微妙な違いを、別離の気分を際立たせる言葉として用いた切り口がすばらしいです。別れるときに両手で一生懸命手をふる様子から鳥を連想させる過程に幻想性があり、その後に「君」の人生が展開していくことの比喩として美しく響きます。「君」と主体との間に何があったのか、具体的には描かれていないので分からないですが、それだけに想像をかきたてられ、夜の道の暗さの中になんともいえない余剰を感じます。

  

☆選者賞 枡野浩一賞☆

飛び立てば淋しく辛いかも知れずそれでも鳥になりたい私         ひと粒の種

【枡野先生からのコメント】

「鳥になりたい」という願望を表現した創作物は昔からたくさんあります。「鳥は鳥で大変なのかもしれない」という指摘も、やはり、同様に多く行われてきたと思います。その両方の視点を一度に表現し、せつなさを感じせる⋯⋯普遍性のある傑作です。東直子さんと枡野浩一の両者が最初から票をいれていた歌ですが、「自分がこういう短歌をつくりたかった!」と思うほど心ひかれた一首であるため、枡野浩一個人賞ということにさせてください。

☆選者賞 東直子賞☆

信号機の影には光も色もなく小鳥の声をたよりに歩く          月館桜夜子

【東先生からのコメント】

原色で表示される信号機の光に対して、地面に落ちる信号機の影は光も色もない地味な存在です。そこに気持ちが向かってしまう、というところに忸怩たる思いが汲み取れます。小鳥の声がするということは、薄暗い世界にも朝がやってきていることを意味します。姿は見えないけれど、声だけが聞こえる小鳥は、淡い希望の象徴のようです。小鳥の声のみ聞こえるしずかな世界を淡々とした文体で描き、繊細な心理が滲む味わい深い一首です。

受賞された皆様、おめでとうございます!

☆先生方の短歌(テーマ詠「鳥」)☆

にんじんを食わせて羽根を染めていく赤カナリアはつくられた鳥    枡野浩一

雨水を溜めた牛乳瓶しずみ花粉まみれの鳥がはばたく         東直子

 

ご参加いただきありがとうございました!
これからも是非、短歌に親しんでいただけるとうれしいです。