☆第9回氷川短歌賞を終えて 投稿作品☆
11月3日の「第9回氷川短歌賞選評会」に投稿された作品です!
【テーマ詠】「鳥」
一、さえずりに耳をすまして歩を散らす澄んだ黄昏れ、見慣れた真顔 井上朱理
二、十四の父と並んで八月の宇和島港の鳶を見ている 和田直
三、WATARIDORI往って帰ってデス・ロード雁行するかひとりで逝くか コイケタツオ
四、「この写真、朝夕どちら?」当てる母曰く「小鳥の声が聞こえた」 石部慶彦
五、公園に群れなして飛ぶ鳥を見た掌の中のピピは生き延びたろうか 藤井かほる
六、沈黙を求めて海へ潜るように鳥は大気の底へ降り立つ 浮沈子
七、囀りのトンネルの中駆け出した吾子へひかりの矢羽根を放つ 風ノ桂馬
八、エナメルの靴を光らせ少女たちカラスの黒い森へと急ぐ 銀の鈴
九、しあわせになるしか、ぼぼー、帳尻を合わせな、ぼぼ、と山鳩の鳴く 奈良岡歩
十、飛び立てば淋しく辛いかも知れずそれでも鳥になりたい私 ひと粒の種
十一、迷い鳥決意の果てへゆきなさい、いばらの海を越えたさきまで 久我山景色
十二、女神湖を散策すれば木立より春を先取るウグイスの声 お茶の水博士
十三、お母さんもう飛べないよ春買つた羽毛布団がこんなに重い 岡本恵
十四、またね、ってじゃあねとちがう両腕を広げて君は夜に走った 黒川かおる
十五、目に見えぬまっしろなその両翼で飛べるあなたは鳥か天使か 小出紘子
十六、鳥だったら食べられてるだろギャグのような人生でした 田村ひよ路
十七、信号機の影には光も色もなく小鳥の声をたよりに歩く 月館桜夜子
十八、想像を超えるショックよ新宿のカラスに蹴られはじまる今日は 睦月くらげ
十九、鳥の群れ内野外野を悠々と巡り野手らはベンチに待機 ドナウ絵蓮
二十、鳥のオリンピックのはずないでしょういくらあなたが物知らずでも 松田弘子
二十一、手の中の小鳥が羽ばたく感じって教わったけど胎動のこと ツブサニコイ
二十二、丹頂の呼び合う声よ雪原を裂きて無名の戦士にとどけ にしゆきえ
二十三、米研ぎの水まき母が呼んでいた鳥たちが来て父をなぐさむ 風天雷
二十四、東から小鳥来る日の嬉しさよ図書館で会うぼくの織姫 イトウカズオ
二十五、青空はとんびがえがくループより遠くにあって粉々だった 中本速
二十六、十三も時計の鳩は鳴きましてポロリと落ちる天命でした 七五三十五
二十七、市役所の展望食堂まわりこむ鳥影の数だけの鳥瞰 今哀子
二十八、紙吹雪撒いたそばから鳥になり解かれたように軽軽と飛ぶ 明眼子
二十九、気がつけば君の最寄りで降りていて鳩レースなら台無しだった 川南 未旅
三十、亡き母と呼ばれる未来憧れのように遥けく鳥が渡るよ 武智しのぶ
三十一、透明な小鳥を逃がす夢をみる初めて人に恋した夜に 斎藤君
三十二、鳥たちのお喋りのうち好きなのはもうすぐ雨が止むよというやつ 小俵鱚太
三十三、ほの暗い窓辺でさえずるうたごえをまどろみてきく晩秋の朝 かおる
三十四、妹が先に実家を出て行ってもう終わる手帳は鳥の柄 小亀令子
三十五、鳥たちの声が集まる木にも雨帰省カバンの車輪を浮かす 鷲尾 紗由里
三十六、おどろきが瑠璃の色して舞い込んで洗濯物と絵本の小鳥 きら
三十七、手を羽にすれば消えちゃう生命線やっぱり鳥になってはいけない 金森人浩
三十八、(ふるさとへ!)羽毛つぎつぎふくらんで布団まるごと夕焼け空へ 六浦筆の助
三十九、猛暑さえ届かぬ白い部屋にいて透明なぼくは小鳥を飛ばす ドルチェ
四十、鳥っぽい人間たちが競い合う鳥っぽい人間コンテスト あそうゆかり
※記事の都合上スペース等の形式は統一しています。
現在、氷川図書館1階から2階に続く階段の壁に投稿作品を展示しています。
選者の先生お二人の作品も展示してありますので、ぜひご覧に来館ください!