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☆第八回氷川短歌賞を終えて③ 受賞作品☆

10月29日に開催されました「第八回氷川短歌賞」受賞作品を発表します。

大賞と選者賞の作品には、選者の先生方からコメントをいただきました!
最後には先生方が皆さんと同じ題詠で詠まれた短歌をご紹介します。

  

☆大賞☆

夕焼けにやさしく橋は錆びついてわたしにたったひとりの母さん   鳥さんの瞼

【山崎先生からのコメント】

夕暮れに染まる橋に佇むお母さんを眺めている場面でしょうか。お母さんがゆっくりと年老いて、いつかは自分の前から姿を消してしまうという予感が、「橋が錆びつく」という描写に滲みます。誰にとっても母親は「たったひとり」であることを強調することで、母を失った後に取り残される自分自身の孤独をもみつめているような一首です。

【東先生からのコメント】

歩道橋のような鉄製の橋がだんだん錆びていく様子は、歳月が過ぎ去っていくことを暗示する。郷愁を誘う夕焼けもそれを助長し、「わたし」と「母さん」の間に流れた歳月を感じさせる。そして、やさしくてあたたかい時間を過ごしたのちに老いていく切なさが滲む。「わたしの」ではなく「わたしに」と書かれていることで母への特別な気持ちが強調され、かけがいのない関係性とその想いに胸を打たれた。

  

☆選者賞 山崎聡子賞☆

橋に見る残堀川へ降る雪のこなわたみぞれあどけなく消ゆ      月館桜夜子

【山崎先生からのコメント】

「残堀川」という、すこしもの悲しい印象の固有名詞が活きた一首。こな、わた、みぞれと形状の違う雪をひらがなで連続して描写することで、空から降ってきた雪が川に溶けてゆくまでの動きが見えてくるようです。「あどけなく」という形容詞から、こな、わた、みぞれが幼い子供たちのようにも感じられ、せつない読後感が残ります。

☆選者賞 東直子賞☆

ぬばたまの夜を跨いだ鉄橋の音がしているわたしの国だ     みずすまし

【東先生からのコメント】

「ぬばたまの」という枕詞を用いたことで、夜の印象が深いものになった。そんな夜を跨ぐ鉄橋の音が、現実とは少し離れた場所へと誘う装置として作用している。遠い場所からやってきて遠い場所へと去っていく、旅人を象徴する音でもある。それを遠くで聞きつつ寝泊まりする部屋を「わたしの国」とする感覚が新鮮。誰にも侵されることない場所でありつつ、そこから世界へ開いていく場所でもあるのだろう。

  

☆氷川賞(参加者による投票)☆

大好きの濁流のなか沈下橋あなたがふいにわからなくなる       福永十津

  

大賞、選者賞受賞の皆様には山崎先生と東先生から手渡しでの景品贈与がありました。

  

大賞授与のひとコマ。おめでとうございます!

            山崎聡子先生(前列向かって左)と東直子先生(前列向かって右)

最後は参加者の方と一緒に記念撮影。
受賞された皆様、おめでとうございます!

  

☆先生方の短歌(題詠「橋」)☆

もう一度出会いましょうよ泥川にかかる冷たい橋のたもとで   山崎聡子

母の母の母の恋人たちの靴 橋の途中にまだ立っている   東直子

 

ご参加いただきありがとうございました!
今回は初めて参加したという方も多くいらっしゃいました。
これからも是非、短歌に親しんでいただけるとうれしいです。

次回の開催もお楽しみに!